東京高等裁判所 昭和28年(ネ)1763号 判決
一、控訴人は東京地方裁判所昭和二七年(ヨ)第三五六六号地位保全仮処分申請について、同裁判所が昭和二七年七月三〇日附で発した仮処分決定にたいする異議の申立によつて、裁判所は、右仮処分のみならず、同裁判所同年(ヨ)第三八七三号地位保全仮処分申請事件について、同裁判所が同年八月七日附で発した仮処分決定についても同時に口答弁論を開いて、決定による仮処分命令の当否を審査してなにぶんの裁判をすべき権限と責任を有するものであるから、当裁判所は、控訴人が前の決定を表示して申立てた異議にもとずく事件の控訴審として、控訴人から別段の申立がなくても、前記両決定の取消をすることができるはずであると主張する。
しかし、仮処分命令が決定によつてなされた場合の債務者の異議は、これによつて口頭弁論において仮処分申請が理由あるかどうか、理由ある場合においても、決定によつて発せられた仮処分命令の内容が相当であるかどうかを審理裁判する制度であるから、ある仮処分申請があり、これにもとずく仮処分決定がある場合、この決定にたいする異議申立あるによつて、裁判所ができることであり、また、しなければならないのは、その決定及びそのもとずくところの申請の当否の審判にかぎること当然であつて、申請の理由あるいは仮処分の内容において、これと関連ある場合であつても、すでに別個の申請にもとずいて発せられた別個の仮処分命令である以上、これに関して審判をすることはできず、またしてはならないこと明かである。したがつて、前記第三五六六号仮処分決定にたいする異議にもとずく原判決にたいする控訴審たる当裁判所は、別個の申請による第三八七三号仮処分決定について審理裁判することはしない。
二、控訴人は、もし、前記第三五六六号異議申立によつては、第三八七三号仮処分決定の当否の判断をうけることが、法律上できないものであるならば、当審において異議申立を拡張して第三八七三号仮処分決定の取消を求めるというのでこれについて案ずるに、仮処分決定にたいする異議申立は前段一に説示したとおりの意義を有するものであつて、各一個の仮処分決定にたいして各一個の異議申立ができ、この異議は、ことの性質上、ひとつの完結体であつて、へらすことも、小さくすることもできなければ、ふくらますこともできないものであるから、申立の拡張とか減縮ということは不可能なことであり、ゆるすべからざることである。したがつて、もし控訴人が前記第三八七三号仮処分の取消をも求めるというは、ことの趣旨が原審に申立てられた本件異議とは別にこの仮処分決定にたいして異議申立をするものというのであれば、これは仮処分命令を発した東京地方裁判所の管轄に専属する事件であるから、独立に申立てられるならば、これを東京地方裁判所へ移送すべきものということになるであろう。しかし、控訴人の意思はそうではなく、どこまでも申立の拡張として前記仮処分の取消を求めるというのであるが、弁論の全趣旨からみて、明かであるから、この拡張は許すべきでなく、かつ移送するを要しないのである。